非エンジニアが止まる5つの場所

この記事について

前の記事で「悩みは消えなかった。頼み方が変わった」と書きました。

では、何で止まったのか。
記録を数えたら、踏んだ罠が23件ありました。1つずつ書くと長いので、5つの場所に束ねます。

全部、実際に踏んだものです。
「よくある失敗」ではなく、こちらが踏んで、直したものだけを書きます。


1. 「動いている」と「効いている」は別だった

いちばん多かったのがこれ。エラーが出ない。ログにも失敗が無い。でも、何も起きていない。

バックアップが「成功」に見えて、1件も保存されていなかった

毎晩3時にデータを逃がす仕組みを作りました。ログには何も出ません。
ところが実際は、自動実行がデスクトップのフォルダを開けずに弾かれていた。
エラーを捨てる書き方をしていたので、失敗が「成功」に見えてた。初回の3時が来る前に、たまたま見つけました。

通知が「送った」のに、届いていなかった

毎朝6時に「今日どうしたいか」を聞く仕組みが、7日連続で「送信成功」と記録されていました。
でも1件も届いていない。原因はプログラムじゃなくて、スマホの集中モード。朝6時が睡眠の時間帯に入っていて、通知を全部止めていたのです。

送信成功=届いた、ではない。

見張り役が、自分自身を見張っていた

止まっていたら起こす、という見張りを作ったら、見張り自身を「止まっている」と誤認して起こし続けました。プロセスを探す条件に、自分を除外する一言が抜けてたから。

ここで学んだこと
「作った」と「効いている」の間に、確かめるという段が1つあります。
非エンジニアはここを飛ばします。エラーが出ないと安心してしまうからです。
エラーが出ない失敗が、いちばん見つかりません。


2. 日本語のフォルダ名で、自動実行が止まった

Macの自動実行(ログイン時や決まった時刻に動く仕組み)は、日本語を含むパスのファイルを開けませんでした。

「秘書」というフォルダに置いたスクリプトが、文字化けして失敗しました。
解決は単純で、英数字だけのフォルダに移すだけ。でも、それが原因だと分かるまでがすごく長かった。

同じ系統で、もう1つ。

自動実行が、デスクトップの中身を読めない

これも許可の問題。しかも許可は「実行ファイルごと」に下りるので、
片方のプログラムは通るのに、もう片方は弾かれる、という食い違いが起きます。
「同じ設定なのに動かない」の正体が、これ。

ここで学んだこと
人間には見えない境界が、機械にはあります。 日本語のフォルダ名、デスクトップという場所、実行ファイルの種類。
どれも人間には「同じ」に見えますが、機械には違います。


3. 「無い」と思って作ったら、既にあった

これは1週間で4回踏みました。

| 提案したこと | 実際 |
|—|—|
| 「安い順で取るべき」 | 巡回スクリプトに実装済みだった |
| 「この問題を新しく発見した」 | 13日前に同じ問題を発見・対策済みだった |
| 「即決のほうが高い」を発見として報告 | 18日前に原則として確立していた |
| 「判別表を作る」 | 541行のシートに全部書いてあった |

原因は、能力でも注意力でもなくて、量。
原則を書いたファイルだけで4,371行。手で作った索引は21日前で止まってた。
人が覚えられる量ではないし、手で書いた索引は必ず古くなります。

ここで学んだこと
「読んで確認する」を手順にしても守れません。
代わりに、提案する前に必ず叩く検索コマンドを作りました。
「読む」ではなく「叩く」。検索結果のログが無い提案は無効、というルールにしています。


4. 数字を、確かめずに引用していた

6年分の販売実績として「163件」という数字を、あちこちで使っていました。
外部のAIにも渡しました。ある日、その元データが手元に残っていないと分かりました。
1か月前に一度画面で見て集計した結果が、以後ずっと引用され続けてただけ。

数字を疑う理由はありません。でも根拠を問われたときに出せない数字を、商品の芯に据えようとしていました。

もう1つ。「1日1枚売って約70年分」と書いてある資料がありました。
割り算したら7.7年。10倍ずれてた。
「70年」は直感的に「多すぎる」と分かるはずなのに、誰も電卓を叩いてなかった。

ここで学んだこと
引用され続けている数字ほど、一次データの所在を確かめる。
桁が大きい数字ほど、割り算を1回自分でやる。
AIは数字を運ぶのが得意で、疑うのは苦手です。 疑うのは人間の仕事。


5. 期待していたものが、そもそも違っていた

最後は、技術じゃなくて前提の話。

「3か月連続で利益を出す」という目標を立てていました。
ところが11月は、船に乗っているので1日も出品できません。
どの3か月を切っても11月をまたぐので、「連続」が暦の上で成立しない目標だった。
単価を上げても、枚数を増やしても、この壁は動きません。

外部のAI2つに聞いたら、どちらも同じ答え。
「陸上勤務前提の指標を、1か月交替の船員に当てていること自体が矛盾」。

ここで学んだこと
努力の量ではなく、測る物差しのほうが間違っていることがある。
これは、AIが教えてくれることではありません。AIは目標に向かって最適化してくれますが、目標が成立しているかは、自分で確かめるしかないのです。


5つを並べると

| 場所 | 一言で |
|—|—|
| 1. 動いていると効いているは別 | エラーが出ない失敗が、いちばん見つからない |
| 2. 機械にだけ見える境界 | 日本語・デスクトップ・実行ファイルの種類 |
| 3. 無いと思ったら既にあった | 読むのではなく、叩く |
| 4. 数字を確かめずに引用 | AIは運ぶのが得意で、疑うのが苦手 |
| 5. 前提が違っていた | 物差しが間違っているかは、自分で確かめる |

5つに共通するのは「確かめる段を飛ばした」ことです。
作った → 確かめる → 使う、のうち真ん中を飛ばしてた。

非エンジニアがAIを使い始めるとき、いちばん怖いのは「できないこと」じゃない。
できたと思っていることが、できていないことです。


次の記事: 船の上でAI社員を作った記録(3本目)

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